2021-12-02

試合終盤の局面に起用したい投手の指標

今回は投手起用について。それも試合の終盤の局面で使いたい投手の指標をご紹介していきます。

既に近隣の中学野球部でのラプソード計測を行なったチームもありましたので、実際にラプソードの項目を交えながら解説していこうと思います。

奪三振・与四死球・被本塁打数

失点というのは投手と守備陣によって決まってきますが、守備側がやれることは実はごく僅かです。ポジショニングでヒット性の打球をアウトにすることも可能ですがそれはリーグ戦などで膨大な打者のデータがあってこそ。一発勝負のトーナメント方式が多い高校野球以下のステージでは、信頼に値するデータを取ることがそもそも困難です。

となると失点を減らすことを考えるのなら投手陣を見直すことが1番手っ取り早いということ。

打者と対戦した場合、アウトの内訳で最もリスクの低いものから高いものまでを順位づけしたものがこちらです。

  1. 奪三振→ほぼ100%の確率でアウトが見込める
  2. 内野フライ→ほぼ100%の確率でアウトが見込める
  3. ゴロ→77%前後アウトが見込め、長打も少ない
  4. 外野フライ→70%前後アウトが見込めるが、長打も多い
  5. ライナー→27%前後しかアウトが見込めない
  6. 四死球→無条件で攻撃が継続、失点の可能性も高まる
  7. 本塁打→無条件で攻撃が継続、かつ失点も生じる

https://books.google.co.jp/books/about/野球データ革命.html?id=L3A_EAAAQBAJ&printsec=frontcover&source=kp_read_button&hl=ja&newbks=1&newbks_redir=1&redir_esc=y

(野球データ革命より抜粋)

最も失点に繋がる危険性が少ないのが奪三振内野フライになります。言い換えると投手にとって自分自身の力で奪えるアウトということです。

内野ゴロに関して言うと、守備側にも委ねられますが7割の確率でアウトにできます。しかし、外野フライライナーに関しては長打のリスクが増え、ライナーに至ると7割以上の確率でヒットになってしまいます。

そして危険性が一気に高まるのが四死球。よく1人相撲と言う言葉で表されますが、本当にその通りで野手は四死球を出しているその間、何も貢献することが出来ません。無条件で相手の攻撃が継続していくので失点のリスクは飛び抜けて高くなります。

防ぎようがないのは本塁打です。フェンスを超えた瞬間に失点が確定するので、最も投手が避けなければならないところです。

こうして見ると

  • 失点のリスクが少ない奪三振
  • 失点のリスクが高い四死球と本塁打

これらは守備を挟まずに「投手vs打者」のみで完結します。

ですが1試合を通して奪三振を多く奪い、四死球少なく本塁打も打たれないというのはプロでも至難の業。そもそも三振を奪うということは球数も多くなるため、球数制限のある学生野球には不向きだと思うでしょう。

ではどうするべきなのか。ここがタイトルの答えになります。

試合終盤の局面は奪三振率が高く与四死球・被本塁打が低い投手を起用することです。

終盤に起用されるとうことはピンチの場面でマウンドに上がることも十分に考えられます。

ランナーがいる状況で試合終盤。ゲッツーを狙える状況でも、1番リスクの少ない(エラーが起きない)アウトは三振です。それ故に狙って三振を奪えることがまず一つの条件。

加えて、自らの四死球で傷口を広げピンチを招き、不用意にカウントを取りに行ってホームランを浴びる。この傾向がある投手は終盤で起用しづらいですよね。

以上のことから

  • 奪三振率
  • 与四死球率
  • 被本塁打率

自チーム投手陣のこれらの数字を計算で割り出して、起用法に活かすというのは非常に重要なことと言えるでしょう。

ラプソードの数字での解説

ここからは奪三振率を高めるべくラプソードの数字を元にしながら解説していきます。

まずフォーシームで空振りを奪うためには球種のホップ成分を高めることが何より大切です。

ボールの回転軸が0時に近づき回転効率が98〜100%の数字になるとホップ成分が50cmを超えてきます。

50cmのホップ成分があれば空振りをする確率は25%にまで上昇。4回に1回は空振りをするということです。さらに球速と回転量も上がってくるとバッターの空振りの確率がより高まります。

次に変化球をフォーシームとの球速割合で空振りを奪いやすい球速にしていきます。

フォーシームが145キロの場合

  • スプリットは91%→132キロ
  • スライダーは90%→130キロ
  • チェンジUPは84%前後→121キロ前後

フォーシームが120キロの場合

  • スプリットは91%→109キロ
  • スライダーは90%→108キロ
  • チェンジUPは84%前後→100キロ前後

あくまで目安ですがこのような球速イメージです。

ただ、学生野球を見ているとフォーシームの球速ばかり伸ばすことに気を取られて変化球の球速に目を向けてない選手が多く感じられます。

変化球の球速が上がるとピッチトンネルを通しやすくなり、変化球でも楽にカウントを稼ぐことができます。そうすると今度はあえてピッチトンネルを大きく外れるスローカーブや縦のスライダーにバッターは反応できなくなり奪三振を狙いやすくなります。与四死球の数値改善にも繋がってきますので、変化球の球速UPにもぜひ力を入れてみてください。

終わりに

というわけで今回はかなり有識者向けの内容となりました。

投手は三振を奪う能力が上がれば、それだけ上のレベルでも通用する可能性が高まります。1番リスクの低い三振を奪えるというのはどのステージに置いても魅力的なものです。今一度投手の方は奪三振という言葉を意識してピッチングを考え練習に取り組んでみてください。

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